emperador GRANDE
プレイヤーと製作者の好奇心が生み出した、もう一つのemperador

emperadorをバストロンボーンサイズまで拡大したら、いったいどんなマウスピースになるんでしょうね?」

これがバストロンボーン奏者堂本雅樹さんとwillie'sの最初の会話です。2009年7月のことでした。それまでお名前は存じ上げてましたし何度かお話ししたこともあったのですが、具体的にマウスピースの話題になったのはこのときが初めてです。堂本さんと中路さんは向井滋春 Super 4 TrombonesやSalsa Swingozaなど一緒のセクションでの現場が多く、emperadorも中路さんご自身のものをいち早く吹かせてもらっていました。テナーも吹かれる堂本さんはemperadorのバランスの良さに着目し、これでバストロンボーンを吹いたらどんな音がするんだろう?と興味を抱かれたようです。

バストロンボーンの受け持つ音域はテナートロンボーンの1〜2オクターブ下であり、音色的にもオーケストラならテューバやコントラバス、ビッグバンドならバリトンサックスやベースとの親和性が求められるため、太く柔らかな響きが好まれます。こういった要求には大きく深いカップを持つマウスピースが向くことは、常識的に考えてみればごく自然なことです。
ところがemperadorの開発時点で中路さんと
willie'sは『深いカップは暗い音色になるのであって、柔らかな音色にはむしろなりにくいのではないか?』という結論に行き着いていました。明るい暗いとか硬い柔らかいといった要素は個々の感性に委ねられるものですが、それでも明るい音色の中にこそ柔らかい響きがあるんじゃないか?と思えていたんですね。ですからバストロンボーンサイズのemperador、これにはある意味確信があり早速設計してみることにしたんです。
設計と第一次試作終了は2009年10月。リムはemperadorのものを若干ワイドにアレンジ。カップ直径はφ28.15mmと1-1/4Gよりやや大きめ。もちろんCカップ相当の深さです。ボアはemperadorと同じくダブルボアを採用、サイズはφ7.5 - φ7.0に拡大しました。段付きバックボアについては大きなサイズではあまり効果的とは言えず、かえって悪さをしてしまうことがこの時点で解っていましたので採用しませんでしたが、バックボア自体はやや樽型のテーパとしました。

できあがった第一次試作品の試奏結果は残念ながら惨憺たるものでした。一言でいえばまるっきりテナーの音色になってしまったんです。あまりに当然の結果に堂本さんもwillie'sも、もはや笑うしかありませんでした。普通ならここで開発終了、平たくいえばボツです。ところがここからが堂本雅樹というプレイヤーのすごさでした。

人間だれしもダメな部分に目がいきがちです。そして良い部分にはなかなか気づきません。これはマウスピースや楽器に限らず、クルマでもバイクでも、家電製品やパソコン、携帯電話、ひいては人間関係においても、とかく粗探しとダメ出しは簡単なんです。ところが堂本さんはこの第一次試作品の優秀な部分、すなわち高音域の吹きやすさをストロングポイントとして見出し、この部分はそのままになんとか低音域の特性を改善できないか?とおっしゃってきました。
つまり…

ペダルFからハイFまでの4オクターブを自在に操ることのできるマウスピースが欲しい。そんなコンセプトのバストロンボーン用マウスピースは世界中に存在しないし、この試作品はその可能性を秘めている。

年が明けて2010年1月。冬の甲府盆地は八ヶ岳下ろしと呼ばれるからっ風が吹き荒れとにかく寒い寒い、そんな日に再び堂本さんが工房を訪れました。もちろん第二次試作とそのテストのためです。あまりに寒くて事務所の暖房が間に合わず、鍋にお湯を張ってそこへマウスピースを入れ温めました。まるで寄せ鍋を囲んでいるかのようで大笑い。そんな柔らかな雰囲気に包まれながら、第一次試作の結果を踏まえ主にバックボアを改良した第二次試作品を削り(お湯で温めて)早速試奏となりました。

驚きの一瞬でした。そこにいた誰しもがYeah!と叫びました。まさに4オクターブにわたり均一に鳴り響くマウスピースが誕生した瞬間です。

その後約2ヶ月の実戦テスト期間を経て、正式にemperador GRANDE(大きな帝王)と命名・リリースされたこのマウスピースは、元祖emperadorと同じく多くの皆さまに愛されお供させていただいています。市場に出してからのフィードバックでは、特に吹奏楽において好評です。『クラシックからポップスまでこの1本で吹き通せる』『中高生の吹奏楽におけるバストロンボーン入門用として最適』といった声が届いています。当初ビッグバンドやコンボなど、あくまでジャズ向けなマウスピースといったイメージがありましたが、これによって認識を改めさせられました。固定観念は捨てていかないといけませんね。

その特異なカップバランスから、決してオールマイティなマウスピースではないかもしれません。でもとびきり個性的です。世界に類を見ないオリジナリティ、これこそがemperador GRANDE最大の魅力なのです。


※写真協力:ジョイブラス

モデル
太管
細管
カップ直径 (mm)
ドリル直径 (mm)
バックボア形状
税込価格/金メッキ仕上げ
税込価格/銀メッキ仕上げ
emperador GRANDE
 
φ28.15
φ7.5 - φ7.0
カスタム
¥30,450
¥24,150

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